「さてさて、きょうのおはなしは……」

さてさて、きょうのおはなしは……

さてさて、きょうのおはなしは……
瀬田貞二 /訳・再話
野見山 響子 /画
福音館書店 1,210円(税込み)

昔ばなしは、いいらしい

息子が幼稚園の頃、寝る前に絵本ではなく、お話だけ聞かせてあげたいと思い本を探していた時、見つけたのがこの本でした。

しかも昔ばなしの本。ちょうどお家でも昔ばなしを聞かせてください、と当時の幼児塾の先生に言われていたところでした。(小学校受験の問題に昔ばなしを絡めたものが多い、などが理由でした)

しかも瀬田貞二さんの本。間違いはないでしょう。

というのも以前本好きの友人が「瀬田貞二さんは日本語がふかふかな人なんだよ」と言っていたのを聞いていたからです。息子もふかふかな日本語にあやかろうという下心も持ちつつ購入。

瀬田貞二さんは「三匹のやぎのがらがらどん」や「ナルニア国物語」などたくさん訳されています。

あれもこれも、瀬田貞二さん訳や、再話だったのですね、という本がたくさんあります。

大人になって知る、大御所の存在。

さて、この本には日本の昔ばなし18話と、世界の昔ばなしが10話が収録されています。

昔ばなしなので、どのお話も5ページほどで終わり、寝る前の読み聞かせにもちょうど良い長さです。

「おだんごぱん」「3びきのやぎのがらがらどん」など、定番のお話も含まれていてお得感もありです。

巻末で解説を、あのガンバの斎藤惇夫さんが書かれています。

この解説を読めば、子どもになぜ昔ばなしが、挿絵のない語りが大切なのかが書いてあります。

その一文にある”子どもの心の中に描かれた絵”、さぞ素敵なものなのだろうと思います。

読んでみて

息子は「三びきのくま」「とりのみじいさん」がお気に入りでした。

「三びきのくま」を読むと、女の子に「きんきらこ」という名前がつけられていて、その名前がツボにハマったらしく大ウケしていました。くま達がいろいろ言っている所も面白くて仕方ないようす。
「三びきのくま」は他の版元でもたくさん出版されていますが、「きんきらこ」が一番好きなようです。

しかし、お休み前の読書としては失敗でした。

眠る前に静かにお話を聞かせ、そのまま穏やかに眠りにつくはずが、なぜか布団の中には、ゲラゲラ笑って目がパッチリ開いている息子がおり、苦笑いしたのも良い思い出です。

でもまぁ気に入ってくれたようで良かったのだけれど。

寝かせても、寝かせても起きてくるの図

とりのみじいさん

「とりのみじいさん」というお話は、私もこの本で初めて知りました。

とはいえ話の型は日本のむかし話おなじみの、働き者のお爺さんは幸せになり、強欲なお爺さんはろくな目に合わない、あのテンプレートなお話。

鳥になったお爺さんが不思議な歌を歌うのだけれど、
その歌が面白いらしく。

あやちゅうちゅ こやちゅうちゅ

にしきさらさら ごようのまつ

こがねざらざら びびらびんちょん

44ページより

働き者のお爺さんのことを歌っているのでしょうが、息子はなんやこれーと言って、ここでも大爆笑でした。(ちなみに欲張りお爺さんVer.もあります。歌の内容は大分悲惨です。)

意味不明な言葉の羅列はちびっこ男子のツボ。

なるほど、本の帯にあった通り、
“読んでも聞いてもたのしい、瀬田貞二の昔話集“の言葉に偽りなし!

こりゃ寝ないわけだ。

昔ばなしって…

他の話も読んでいて思うのは、
やはり、むかしばなしは現代人の感覚では話の内容が少しこわいなぁと思いました。

理不尽であり、容赦なく残酷だと思う所もあったり。
読んでいて意味がわからないことも。
一体どちらが悪いのかわからなくなることすら…いろいろ考えてしまいます。

これは大人ならではの感想だと思っていましたが、息子も「三びきの子ぶた」を読んだ後、「子ぶたもなんか悪くない?」と言っていました。

昔なら物語の悪を懲らしめる為の手段に何を行おうと、眉をひそめる人などおらず、むしろ子ぶたは知恵を絞って生き延びた賢い者と称賛されていたのでしょうが…現代の感覚では、やっぱり子ぶたはやりすぎですね(笑)

言葉の面白さを楽しむことも、話の内容に立ち止まって思うことも、子ども自身のもの。

就寝前の静かな読書は失敗しましたが、もっと大きな収穫があったように思った一冊でした。

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