
せかいのひとびと
せかいのひとびと ピーター・スピアー 絵・作 松川 真弓 訳 評論社 1500円+税
いろんな国の民族衣装を着た、数えきれないほどの人々が描かれた表紙。
この数年で世界の当たり前が変わった。
これからはこんな風に人が密集している光景は、なくなっていくのだろうか。
それともまた元に戻る日が来るのだろうか。
本をひらくと地球があり、次のページでは、アダムとイヴを思わせる裸の男女ふたりが、楽園のような大自然を見渡している。
そしてまた次のページ、爆発的に増えた、たくさんの人々。
大人、子ども、男の人、女の人…
同じ服を着ている人たちも、やっぱりどこかが違う。
同じ人はいない。
もし同じような顔で、同じ服を着ている人がいたとしても、その人自身は、全く違う人なはず。
そこにギリシャの詩人、メナンダーのことばがある。
“汝 自身を知れ“とはよく言うけど、
こりゃうまくないね、
“他の者達を知れ!”
この方が、効き目はあるさ。
「せかいのひとびと」より
他人を知ること、認めること。
果たして大人の私はできているのか。
見た目の違いから、文化、それぞれにみんな違っているということを伝えている。
なかには初めて知るショッキングな文化もあり、世界の広さを思い知る。
お金持ちの人、貧しい人、利口な人、そうでない人、包み隠さず、描かれている。
子ども向け絵本なのだからと、暗いところに目を背けたりしない。
全ページに大切なことが描かれている。
もうこの一冊をみんなで読めば、道徳の授業はいらないのではないだろうか。
もっといえば37ページにある、
ある人たちは 自分とちがっている というだけで
よその人たちをきらう。そんなことっておかしいよ。
その人たちは 自分たちだって ほかの人から見れば
ちがっているってことを わすれているんだ
「せかいのひとびと」より
この視点を忘れなければ、世界は平和になるのではなかろうか。
個人的には、19ページの
たいていの人は みんなで なにかするのが すきだけれど
一人で いるのが すきな人も いる。
「せかいのひとびと」より
という一文。学生の頃の私に伝えてあげたい。
一人でいるのが好きでもいいのだ、と。
こんな風に本に書かれているのを読むだけで、存在を認められたような気持ちになる不思議。
現代では、一人が好き、という人の多いのでは?とも思うが。
いろいろな少数派と言われる人や、自分は人とは違うと抱えているものがある人がいる。
この絵本の視点を持てば、理解まではいかなくても、そういう人もいると認識することはできる。
そうすれば、もっと生きやすい世の中になるに違いない。